誰もやらなかった育休後コンサルタントで起業

投稿日: カテゴリー: 先輩に学ぶ
先輩事例 0010 山口さん

先輩インタビュー:0010 起業:育休後コンサルタント

山口 理栄(やまぐち りえ)さん

育休後コンサルタント® 主催

 

■ 今は何をしてらっしゃいますか? 現在のお仕事を教えてください。

育休後コンサルタントをしています。仕事と育児の両立支援を法人向けに研修しています。またそういった部下をもつ管理職向け研修もしており、年200回程度提供しています。

■ 退職前はどんな仕事をされていましたか?

総合電機メーカーでソフトウェアの設計開発をしていました。二度出産し、部長を務めるまで24年間働きました。
その後コンサルティングについて学びたいため、コンサルティングファームに転職しました。そこではコンサルティングや研修企画、HP作成、研修を売り込み、マーケティングなどいろいろなことを学び、マーケティングシニアディレクターとして2年間学んだあと独立しました。

■ 会社を辞めたのはいつですか?

2010年です。女性活躍推進プロジェクトのリーダーを2006年から2年間やりました。自分が出産育児で苦労した時から10年たっていましたが、その後何も変わっていなかったことに気づきました。
当時10歳だった自分の娘が社会人になった時にもっと良い世の中にしなければと思い、育休後コンサルタントを志したのです。

■ 何故今の道を選んだのでしょうか?

当時 Twitter で育休を取って仕事を継続する人たちが議論する場として「ワークライフバランスカフェ」を土曜日の夜10-12時で開催していました。この場を通じて、両立に関する当事者の悩みが大きく、かつ対象者がとても多いことを把握できました。
最初、悩みを解決するカギは個人にあると思っていたのですが、問題は職場や上司にあることが分かってきたので、法人に提案できるコンテンツを作成していきました。実は職場でもどんどん増える育休復帰者の扱いに困っていました。マミートラックに良かれと思って乗せても人数が増えてその職場があふれるなど、課題も認識しはじめていたのです。

■ 安定した収入を捨てた理由は?

解決すべき問題がはっきりして、自分がそれに取り組むべきだという思いがどんどん大きくなった時、会社の中ではやりたいようにできないことが分かってきたので、思い切って退職しました。

■ セカンドキャリアの準備を始めたのはいつ頃ですか?

46歳のころです。

■ これまでに試行錯誤した時はありましたか?

試行錯誤の連続でした、49歳で独立しましたが、2年位は収入につながる仕事がほとんどありませんでした。地道にシンポジウムに参加したり、人脈を築いたりしながら、ブログの更新、育休後カフェの開催などを積み重ねていきました。

私としては企業に対して、本人向けの意識向上研修をやりたい思いがありました。
研修講師の経験がないので、研修会社に応募する資格もありませんでした。しかし諦めず、研修会社に企画をもって売り込みに行きました。企画自身がユニークだったので、キャリアコンサルタントの資格維持のための継続学習のセミナーの講師をさせてもらうことが出来ました。

更にA社との出会いがブレークになりました。A社の顧客企業に「育休後職場復帰セミナー」の必要性を伝えられるチャンスを得たられたのです。

NPO法人ファザーリング・ジャパンとの出会いも必然的なものでした。育休者本人(主に女性)、法人へのアプローチは形になりつつありましたが、次の課題はワンオペ育児をしている本人の夫、パパをいかに巻き込むかでした。そこでこのNPO法人の会員になり、パパスクールなどいろいろな活動に参加して、育児に積極的なパパの知り合いを増やしていきました。

はてなダイアリーで立ち上げたブログをやめて、独自ドメインを取得してWebサイトを立ち上げたところ、大手企業の目に留まりました、依頼を受けて、育児休職中の方に向けたセミナーを実施することになりました。その時の顧客には6年たった今でも研修を提供しています。

また、他の研修会社からもWebサイト経由でコンタクトがあり、講師の登録をしました。このようにして契約した研修会社が営業や集客をしてくれるので、法人向けの営業をしなくても案件が増えてきています。

最初は育児休職者本人向けだけを実施していましたが、本人から「上司が変わらなければ難しい、上司むけにも研修をしてほしい」という訴えがあり、管理職向けコンテンツを作成しました。当事者向けと異なり、納得していただくのが難しい相手です。試行錯誤しながら、コンテンツを次々とアップデートしています。

本人向けの研修を進めていくうちに、本人、上司に研修してもなお、両立したくてもあきらめ気味の女性社員がなかなか減らないことに気づきました。本人にキャリア意識があっても夫が育児、家事をしなければ、妻のワンオペになる。パートナーの意識を変えないと女性の両立はやはり難しいと感じるようになりました。そこで夫婦同伴型セミナーを始めたところ、効果は絶大。これにはすごく手ごたえを感じています。

夫は育児、家事をやらなければいけないとわかっていますが、職場に対する遠慮やキャリアに与える影響への不安があり、なかなか早く帰れません。しかし研修に来た後に思い切って自分の上司に育休取得について相談したら、あっさりと理解を得ることができたなど、世の中は着実に前に進んできています。夫が研修に参加すると、行動が変わることが多く、若い世代の柔軟性には大いに期待しています。

■ 今、抱えている問題は?

規模拡大ができていないことです。自分ひとりではすでに限界なので、コンテンツを広める後継者を育成中です。育休後アドバイザーと育休後カフェ・ファシリテーターの2種類の人材を養成中です。特に地方の自治体ではその地方の保育園情報等に詳しい地元の講師がいると、より充実した研修になるため、地方講師も育成中です。

本も2冊出しましたが、これからも書きたい。オンラインサロンも立ち上げましたが、こちらもまだまだ軌道にのっていないので、これからです。

■ 今の生活に満足していますか?

満足しています。子どもたちが家を出たので、誰に気兼ねすることなく自分の時間が使えます。

■ 後輩にアドバイスするとしたら

起業したい人もまずは可能な限り企業で出世してみたら良いのでは。自分が平凡だと思う人ほど、組織でもまれてみましょう。企業ではいろいろなことが学べます。管理職としての経験も貴重です。勉強するなら企業にいて収入を得ながらやるべきです。独立すると軌道に乗るまでがメンタル的にも厳しい。焦りが出てくると足元を見るような怪しい商法に引っか借りやすくなります。ある程度準備が整ってから辞めた方がリスクが少ないのではないでしょうか。

■ 今後の展望は

グローバル展開です。JWEF(日本女性技術者フォーラム)のアジアパシフィックの会議でベトナムに行って日本の状況をプレゼンしました。
日本は仕事と育児の両立では遅れているといわれていますが、アジア各国でも進んでいるわけではないので、遅れている日本の状況のコンテンツも使えると思っています。

■ 最後に働くという意味はあなたにとってどういう意味をいますか?

今は自分と家族が生活するために働いていますが、もともと子どものころから仕事はずっとするもの、生きること=働くことだと思っていました。その上で、人の役に立てる、喜んでもらえるのなら、こんなにうれしく、楽しいことはありません。

山口 理栄|育休後コンサルタントのWebサイトはこちら
http://1995consultant.com

 

■ 編集後記

ご自身の仕事に対する思いと誇りを感じました。会社を辞め、コンサルタントの修行を積み、そしていろいろな講演や勉強会に参加して人脈を築いて事業を少しずつでも着実に積み上げていく様子を淡々と語られましたが、熱い思いを秘めたエネルギーは世の中を良くしたいという思いでしょうか? 世界まで視野にいれて未来を目指している姿に新たなセカンドキャリアの在り方をみました。(2018年10月1日)